Prat_2 -1 20250912
ランダム事象発生装置という測定装置を知っていますか。大雑把に言うと、これは「0」と「1」をランダムに出す装置です。「0」が出るか「1」が出るかの確率はそれぞれ2分の1です。
同時多発テロ事件が起きた際には、世界各地に置かれていた37個のランダム事象発生装置に変化が起こったそうです。
普段はランダムに出力するその装置は、はっきりとした規則性をもつ出力を一斉に始めたそうです。
同時多発テロ事件は世界規模で取り沙汰され、多くの人々が衝撃を受けました。その思念が装置に影響を与えたのだと考えている人もいます。もしその説が本当なら、人間の思念は世界に影響を及ぼしたということになりますね。
現実では大した力ではないでしょう。しかし、もし、その思念を用いて本来なら起こりえない現象、“虚象”を創ることのできる人たちがいる世界があったら……というのがこの話です。
未明、満月が出ている。彼は若干の肌寒さを感じていた。微風が髪を撫でている。河川敷。右手にある川からはザザザと低めの濁った音が聞こえてくる。夕示白幸(ユウシシトミ)は歩き、近づいていた。数10m先では、橋の下に倒れた人影とうずくまった人影がセットであった。
さすがに近づきすぎた。気配を立てないようにしても流石に無理だ。うずくまった人影は白幸の姿を視認するや、一気に彼の方へと向かっていった。白幸の視界に映るそれは瞬きするごとに大きくなっていった。白幸は手を前に出して構えようとした。
突如、何かが目の前の視界をふさいだ。それを咄嗟に右手で弾いた。いつの間にか彼は間合いに入られていたらしい。視界をふさいでいたのは、目潰しのための手だった。体勢が崩れた隙にその人影は白幸の右脇腹に蹴りをいれた。白幸は受け身をとりつつ一回転して立ち上がり、そのまま後ろに下がった。
「このままじゃ勝てねー」と思った白幸は、五感を排除して集中した。“虚象”が創られる。