前文 中編その2 240630
書くことが多々あるので、伏線を壊さない程度には質を下げます。うーん、結構がっつりになりそう。。。
傷の少ないファイルには折れていない授業資料が整って入れられている。一つ一つの手の動かし方に上品さがにじみ出ていた。中学高校を訊くと公立の中でも学費の安いところ。失礼だが、意外。所作がこれほどまでに綺麗な人をあまり知らない。
だから、熱っぽく語っている姿には少し驚いた。
(おい、待て。人のこととやかく言える立場じゃねーだろ、猿の学校出身者が。)
こんな授業があった。好きな偉人について英語で簡単な紹介文を書いて先生に提出した後、ペアに紹介文を話すという内容だ。
(Aちゃんはやっぱり、流暢だなあ! すげぇ。んで紹介している有名人は、ん、有島武郎? なんか聞いたことがあるような。へえ、明治大正期に活躍した北大出身の小説家。ん? なんか今日声大きくない?)
今まで(といってもたった一回前回の90分の授業のみだけだが)Aちゃんに対して掴み所が無いように感じていた。ずっとやんわりニコニコと咲っている。ただこの時は眼に差す光が印象的だった。丁度、刃に当たって反射した光に似ていた。
『一房の葡萄』。Aちゃんの紹介文の中で出てきた有島武郎の短編だ。短いため俺は青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/000025/files/211_20472.html)で読んでみることにした。
幼い少年時代の酸っぱさがありつつ、日だまりでうたた寝をするような、そんな読後感に浸った。
胸が少し疼く。